靱公園『みやこ』のむし寿司。
|
靱公園エリアの一角。
壁際にたくさん並べられた鉢植え植物や、
どっしりとした店構えがひときわ目立つ、
老舗の寿司屋があります。
なんともいえない風情が漂っています。

妙に強く惹きつけられて、昼食をいただくことに。

ここは、大正2年創業の『みやこ』。
2代目で87歳(!)のご主人が、
いまも現役で包丁を握っておられます。
品書きは、大阪鮨、箱寿司、雀鮨、
穴子押しすし、松前すしなど。
迷った挙句、冬季限定のむし寿司¥1,200を注文。
待ちながら、店内をぐるりと見回します。
時代を感じさせる柱時計や能面、凧、玉簾、
まるでここだけ時間が止まってかのような、
靱公園界隈にいることを忘れさせる店内です。
新聞の切り抜きもたくさん張ってあります。
一つひとつ丁寧に読み込んでいると、
厨房からはじゅわっという音と、卵を焼くいい香り。
続いて、とんとんとんと規則正しい包丁の音が聞こえてきます。
錦糸卵の準備でしょうか。
そうこうしているうちに、お待ちかねのむし寿司が。
蓋がついた、小ぶりのお茶碗。
そっと蓋を開けて、むし寿司との対面です。

具は、錦糸卵、焼き穴子、桜でんぶ、椎茸、烏賊など。
香ばしく焼き上げられた穴子の、力強いこと。
身からしみ出るたっぷりとした旨みにうっとりします。
甘辛く煮た椎茸も圧倒的なおいしさ。
小さく切ってあるのに、驚くほどの存在感です。
さて、食べ進めていると、
おなかの底からほくほくと温まってくることに気づきます。
ご主人も、
「あったまるやろ?ええもんやろ、むし寿司も。
最近では少なくなったけどなあ」と。
たしかに、冬ならではのごちそうです。
「むし寿司っていうのは、京都から西のたべもんや。
とは言っても、地域それぞれに具も違うけどな」
と、ご主人。
接客を担当されている奥様も、
「うちは、創業当時からずっと味を変えていないんですよ」
と教えてくださいます。
お二人とも肌がつやつや。
穏やかな笑顔をしておられます。
そして、大阪寿司やむし寿司、
近年では頻繁に見かけることのなくなったこの文化を、
心から愛しておられるように感じました。
心がぽっと温まる、幸せなひとときでした。
さて、帰ってから知ったことですが、
店前には自転車が止めてあって、
毎日、ご主人がその自転車に乗って中央市場まで買い物に行かれるのだとか。
御年87歳で、暑さ寒さをものともせず、
自転車に乗って中央市場まで!
がんばらなきゃな、と思います。
■みやこ■
06-6441-5048
大阪市西区京町堀1-13-3